研究課題/領域番号 |
08256223
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
恵口 豊 大阪大学, 医学部, 助教授 (20243206)
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研究分担者 |
辻本 賀英 大阪大学, 医学部, 教授 (70132735)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1996年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | 神経細胞死 / アポトーシス / ネクローシス / Bcl-2 / Bcl-x / ミトコンドリア / ICE / ATP |
研究概要 |
細胞死は、生体の正常発生や細胞数の恒常性維持などに重要な役割を果たしている。それぞれの細胞は、細胞外からの刺激に応答して、形態学的に明確に区別できるアポトーシスあるいはネクローシスにより死に至るが、そのメカニズムは十分に理解されていない。多くのアポトーシスがBcl-2の過剰発現やICE様プロテアーゼの阻害により、抑制されることから、Bcl-2とICE様プロテアーゼの作用点がアポトーシスのメインマシナリーを形成していると考えられる。本班会議ではBcl-2やICE様プロテアーゼなどをプローブとして得られた、アポトーシスのメインマシナリーにおけるシグナル伝達に関する最新の知見を紹介したい。 Bcl-2は核の外膜や小胞体膜の他、ミトコンドリア膜に局在するが、Bcl-2はミトコンドリアの呼吸及び活性酸素に影響を与えないことが知られている。最近我々は、アポトーシス誘導に伴い、アポトーシスに特徴的な核の変性よりも先行してミトコンドリア膜電位の低下が観察され、この低下はBcl-2の過剰発現により抑制されることを見い出した。このBcl-2によるミトコンドリア膜電位低下の抑制は、単離したミトコンドリアでも観察され、またKCNなどでミトコンドリアに直接傷害を与えてネクローシスを誘導した場合にもみられ、かつこのネクローシスをBcl-2は抑制することができる。 Bcl-2やICE阻害剤により呼吸鎖阻害によって誘導されるネクローシスも抑制されることは、アポトーシスと少なくとも一部のネクローシスがBcl-2とICEの作用点を含むシグナル伝達経路を共有していることを示唆している。我々は、細胞内ATPを枯渇させるとアポトーシスに特徴的な核の変性が完全に阻害され、最終的にネクローシスが生じることを明らかにした。従って、アポトーシスは細胞内ATP濃度に依存性であり、アポトーシスかネクローシスかの細胞死の最終的形態の決定に細胞内ATP濃度が関与していると考えられる。 多くのアポトーシス誘導シグナルがアポトーシス抑制蛋白質Bcl-2の作用点とICEファミリープロテアーゼカスケードを経て伝達されるが、以上の反応は細胞質内で起こると考えられるので、ICEファミリープロテアーゼカスケードから出た核の変性を誘導する何らかのシグナルが核の変性に先立ち細胞質から核内へ伝えられると思われる。能動核移行を阻害する種々の物質を細胞質にマイクロインジェクション法により導入すると、アポトーシスに特徴的な核の変性が抑制された。従って、アポトーシスに特徴的な核の変性には能動核移行が必須であり、これが上述のアポトーシスにおけるATP依存性のステップの1つと考えられる。
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