研究概要 |
前年度クローニングした3つのミズワラビKNOX遺伝子(CKNOX1,2,3)についてmRNAのほぼ全長について塩基配列を決定し、これまで報告された被子植物KNOX遺伝子とともに遺伝子系統樹を構築した。CKNOX1と2は姉妹遺伝子群となり、従来クラス1と呼ばれていたKNOXサブグループに属することがわかった。さらに、被子植物とシダ類が分岐したあと、少なくとも3回の遺伝子重複が起き、シダ類のCKNOX1とCKNOX2に相同な遺伝子は、被子植物には少なくとも3群存在していることがわかった。それらは、(1)KN1遺伝子群、(2)RS1遺伝子群、(3)STM遺伝子群である。シロイヌナズナでは、STM遺伝子群を欠失すると茎頂分裂組織が無くなる。他の遺伝子群は、やはり茎頂で発現しているが、loss of function突然変異体は得られていない。それぞれの群の遺伝子はともに茎頂周辺で発現しており、元来持っていた機能が、遺伝子重複により多様化しているのではないかと推定される。シダ類は、被子植物に比べて単純な茎頂分裂組織を持っている。遺伝子数の増加が被子植物の他細胞性茎頂の進化と関係したのかもしれない。 また、この他にATK1遺伝子群、LG3遺伝子群が認識された。これらは、シダと被子植物が分岐するよりも前に分岐していた可能性が高い。また、クラス2遺伝子群はシダ類からのCKNOX3を含んだ単系統群となった。 in situハイブリダイゼーションの結果、CKNOX1、2遺伝子はともに、茎頂、若い葉原基、根端で発現していることがわかった。クラス1遺伝子の根端での発現は、RS1遺伝子のみで知られており、今後、被子植物でも根端分裂組織に関係するクラス1遺伝子が得れる可能性がある。
|