両生類アフリカツメガエルMHCの構造をより詳細に検討する目的で、クラスIa、クラスIIb、補体Bf、C4、HSP70、LMP7遺伝子間の連鎖解析を行い、MHC内で組み換えを起こしたカエルを2匹認めることにより、これらの遺伝子は3群に分けられ、クラスIa、C4が中央に位置する事が判明した。この遺伝子配置は哺乳類のMHCとは著しく異なっており、MHCは脊椎動物の進化の過程で、主要な遺伝子の連鎖は保ったまま大規模な再編を経験したことが示唆された。特にツメガエルの遺伝子配置ではクラスIaと、その上に提示される抗原のプロセシングに働くLMP7の遺伝子が互いに近接して存在することが示唆され、これがMHCの原型に近いものと考えられた。 一方、硬骨魚類のメダカからは、クラスIIb、Bf/C2、LMP2、LMP7の遺伝子の単離、連鎖解析を行った。補体Bf/C2遺伝子は哺乳類Bf、C2とほぼ同程度の類似性を示し、どちらであるかは決定できなかった。これはツメガエルの遺伝子が明確にBfと同定されたのと対照的で、補体系が下等脊椎動物の段階で発展したことが窺われた。連鎖解析の結果、クラスIIb遺伝子は3コピーが、二つの遺伝子座に分かれて存在すること、Bf/C2遺伝子はそのどらちとも連鎖していないこと、及びLMP2、LMP7遺伝子は互いに連鎖しているが、クラスIIb、Bf/C2遺伝子とは連鎖していないことが明らかになった。従って今の所、メダカにはMHCと呼びうる遺伝子複合体が存在するかどうかは明らかでなく、今後その点をクラスIa、TAPの遺伝子を解析することにより、明らかにして行きたい。
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