研究概要 |
大腸菌のDNA修復蛋白質Adaの分子量16kDaのN末側機能ドメイン(N-ada16k)のDNA認識機構と修復系の活性発現と制御の仕組みについて、Ada蛋白質-DNA複合体のNMR解析により研究を行った。N-ada16kの遺伝子を大腸菌に組み込んだ大量発現系を構築した。培養及び精製条件を検討し、M9最小培地で収量20mg/Lの系を構築した。N-ada16kはCys69がメチル化されると転写制御因子として働くので、反応条件の検討によりCys69が選択的にメチル化されたme-C69 N-ada16kを調整した。この系を用いて蛋白質を^<13>C,^<15>N安定同位体ラベルしNMRシグナルの帰属と2次構造の同定を行ないN-ada16kとme-C69 N-ada16kの^<15>N-^1H HMQC及び^<113>CdNMRスペクトルを比較した。さらに、両者とDNAの複合体の^<15>N-^1H HMQCスペクトルの解析を行なった。DNAとの複合体形成によりDNA結合に関与する残基のNMRシグナルが線幅増大により観測されなくなった。この結果よりN-ada16kはHTH-DNA結合モチーフの領域でのみDNAと非特異的結合をしていることが明らかとなった。me-C69 N-ada16kではHTH-DNA結合モチーフの領域とCys69を含む亜鉛結合部位がDNAと特異的結合をしていることが明らかとなった。変異体の結果は、HTH-DNA結合モチーフの領域がDNA認識に直接関与していることを示していた。即ち、メチル化により新たにCys69を含む亜鉛結合部位がDNAと相互作用することにより、me-C69 N-ada16kは特定のDNA配列を確認することが可能となると考えられた。現在、この相互作用の詳細を明らかにするためにme-C69 N-ada16kとDNAの複合体の立体構造解析を行っている。
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