研究概要 |
造血幹細胞腫瘍白血病化の分子機構の一端を明らかにする目的で進展期MDS症例に観察されるt(11;19)(q23;p13.1)の原因遺伝子MLL/MENの解析を行った。MLLはAT hooksと2つのzinc finger domainsを有する転写因子であり、t(11;19)転座の結果、2つのzinc finger domainsを失っている。一方、MENは849個のアミノ酸をコードする新規遺伝子であり、t(11;19)転座の結果、N末の45個のアミノ酸を失っている。その後、MENはRNAポリメラーゼII伸長因子をコードしていることが報告された(Shilatifard,A.,et al.,Science 271,1873-1876,1996)。私たちは、MLL/MEN、tMLL(患者白血病細胞で発現が期待される2つのzinc finger domains以下のシークエンスを失った短縮型のMLL)、MENのcDNAをCos7細胞に遺伝子導入し、それぞれ230kD,180kD,80kDの蛋白質として発現することを明らかにした。免疫組織染色及び細胞分画の実験により、これらの蛋白質はすべて主に核内に存在することが明らかになった。さらに、MENの生物学的機能を解析する目的でMEN及びlysine rich domainを欠いたMENの欠失変異体cDNAをRatl細胞に遺伝子導入した。この結果、MENはlysine rich domain依存性にRatl細胞のコロニー形成能を増強することが確認された。t(11;19)転座により形成されるMLL/MENは転写伸長因子の異常機能亢進により幹細胞腫瘍を白血化させる可能性があると考えられた。
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