研究概要 |
ヒト末梢血、臍帯血より得たnull細胞を各種モロクローナル抗体を用いて免疫染色後、セルソーターを用いてCD34^+細胞の亜分画を得た。これらの純化幹細胞を用いて、以下の増殖分化シグナルの解析を行った。まず、マウスストローマ細胞株MS-5との共培養系を用いて、芽球コロニー形成法を確立した。CD34^+細胞亜分画の特性解明には、CD38, CD33, HLA-DR, c-kit, fit3, IL-6R, Thy-1などに対するモノクローナルを用い、各分画のコロニー形成能、芽球コロニー形成能、LTC-ICの頻度などについて検討した。これまでの研究で、IL-6, IL-11, G-CSG, LIFなどの早期作用因子(細胞周期導入因子)、IL-3, GM-CSF, IL-4などの分化段階特異的因子、さらに、c-kit, flt3などの受容体型チロシンキナーゼに対するリガンド(SCF, flt3リガンド(FL))間のユニークな協調作用を明らかにした。さらに、c-MplのリガンドであるTPOとSCF, FL, IL-3, IL-6 (IL-11)との間に顕著な造血前駆細胞増幅効果を認めた。また、純化CD34^+細胞亜分画におけるWT-1の発現についても詳細に検討し、未分化幹細胞の増幅分化における役割の解明を続けている。以上の研究より、LTC-ICなどの未分化造血前駆細胞の免疫特性が幹細胞源により異なるとが示唆された。さらに、これらの成果に基づいて、IL-6, IL-11, LIF, OSM, CNTF, CT-1などに共通のシグナル伝達分子であるgp130を介してシグナルの造血作用の解明にも着手している。CD34^+ IL-6R^<+or->細胞を標的として用い、IL-6あるいはIL-6/sIL-6R複合体を用いgp130を介するシグナルを活性化した。その結果、c-kit, IL-3R, gp130を介する3つのシグナルを同時に活性化することで、G-CSF, Epo, TPOなどの細胞系列特異的因子非存在下に、3血球系統の造血前駆細胞の劇的な増殖分化が認められた。現在、この系を用いて有効な造血幹/前駆細胞の増幅システムの開発に着手している。
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