研究概要 |
造血幹細胞から巨核球を経て血小板が産生される分子機序は、巨核球特異的な造血因子スロンボポエチン(Tpo)が同定されて以来、その解析は急進展した。私達はTpo遺伝子を骨髄ストローマ細胞より単離し、Tpoとストローマ細胞による巨核球・血小板産生の促進及び抑制効果、Tpoレセプター(Mpl)を介したシグナル伝達機構を明らかにしてきた。しかし他の細胞系には見られない巨核球のploidyの増加(多倍体化)やproplatelet formation(PPF)による血小板放出等の巨核球分化成熟過程の分子メカニズムや、これらを誘導する巨核球特異的なシグナル伝達機序は未だ未解決であった。そこで本研究では、まず巨核球の多倍体化機序を細胞生物学的に解析した。mitosisをスキップしてDNA複製のみが進行することにより多倍体化する説があるが、私達はprophase,metaphase,anaphaseの各phaseを多数の中心体を形成して進行する像を捕えた。telophaseに極間が短い為に一個の核が再構成しているように観察された。次にin vitroでのPPF形成機序を細胞間相互作用と液性因子の同定を含め解析した。各種骨髄由来のストローマ細胞はPPF形成に抑制的に働くこと、Tpoや他の既存のサイトカインはPPF形成には全く作用しないこと、血小板減少症ITP患者の血漿には高いPPF活性があり血小板減少症AMTではPPF活性が低いこと、トロンビンやIgGがPPFを阻害すること等を見い出した。さらにある細胞株の上清には濃度依存性にPPF活性を示すことを見い出し、PPF形成には新たな因子が作用している可能性を示唆し、現在その因子のcDNAをクローニング中である。またTpoのシグナル伝達にストレス応答やアポトーシスのシグナル伝達経路であるJNKカスケードが活性化されることを見い出した。
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