研究概要 |
マメ科植物ミヤコグサLotus japonicusはその共生細菌Rhizobium lotiの感染によって窒素固定器官根粒を形成する。本研究ではミヤコグサのミュータントの単離を通じて、根粒という共生的窒素固定器官の発生を細分化し、細分化されたそれぞれのステップに関与する因子を明らかにすることを目的とする。17,000のEMS処理したM2種子を播種し根粒形成に異常を示すミュータントをスクリーニングし、最終的にM4世代まで形質の安定な11系統のミュータントを単離した。戻し交配、ミュータント間でのアレリズムテストより今までに5つの根粒形成を制御する遺伝子座を同定している。内訳は、根粒形成が完全に見いだされないミュータントに2遺伝子座[Nod-]、根粒形成の効率がわるいものに1遺伝子座[Nod+-]、窒素固定活性の発現に関与するものに2遺伝子座[Fix-]を明らかにした。[Fix-]の2種のミュータントは、電子顕微鏡による内部形態の観察によりさらに明確に2分された。その一つ(wabl)は根粒菌が感染糸をとおして宿主細胞内に進入し、最終的にエンドサイトシによって取り込まれる過程がブロックされており、バクテリアの宿主細胞内への取り込みに関与する遺伝子に変異が生じたことが類推された。一方、feclミュータントは根粒菌の細胞内共生は成功しているが、細胞内共生したバクテリアが充填した宿主細胞の肥大成長の過程に異常が観察された。[Nod-]の2種のミュータントに関しては、根粒菌の分泌するNod factorの応答性について検討し、そのうちの1系統は野生型で観察される根毛の変形が観察されず、Nod factorの受容に関与する遺伝子の変異に起因するミュータントであることが示唆された。得られたミュータントの遺伝解析さらに、カルシウムの応答性については現在検討中である。また再度ミュータントのスクリーニングを行い、いままでのカテゴリーに当てはまらないミュータントの単離も進行中である。
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