研究概要 |
フリーラジカルによるDNA損傷の中で,直接または間接に毎日多数生じている塩基欠落部位(APサイト)の修復に関与する酵素及びチミングリコールのようなラジカル損傷ピリミジン塩基の修復に関与する酵素について研究し,以下のような研究成果を得た。 APサイトの5′側に切れ目を入れAPサイトの修復開始に関与する哺乳類酵素の主体は,これまで報告してきたAPEX nucleaseであったが,この他に30kDaと39kDaの二種のAP endonucleasesの存在を見出しこれらをマウス腹水肉腫細胞から精製し,性状解析を行い,部分アミノ酸配列を決定した。これら酵素のcDNA cloningを試みているが未だ成功していない。 2.APサイト修復においてAPEXの次のステップにflap endounclease (FEN-1 ; DNase IV)が関与して5′ブロックを除くことを示唆した。このことを確かめるために,最近報告された塩基配列を利用してマウスの本酵素cDNAをcloningし,大腸菌で発現してrecombinant FEN-1を得た。 3.APEX nuclease,recombinant FEN-1等の精製酵素で,APサイト修復系を構築し,APEX nuclease,FEN-1等がAPサイトの修復に重要な役割を演じていることを示唆した。 4.ラジカル損傷DNAに多く見られる損傷ピリミジン塩基の修復開始に主役を演じている大腸菌endonuclease III (endo III)の哺乳類ホモローグのcDNAをマウスとヒトのcDNA librariesからcloningし,全塩基配列決定した。 5.Endo IIIホモローグ,APEX nuclease,FEN-1,DNA polymerase,DNA ligase等精製酵素を用いて塩基除去修復系を再構築することを計画している。
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