研究概要 |
MMTSの発がん抑制機作に関して,大腸菌における紫外線突然変異抑制機作の検討から始め,動物の化学発がん抑制機作の一つとしてプロモーション段階での抑制作用を培養細胞系で確認した。以下に概要を箇条書きにした。 1.抗変異作用の範囲の特定 (1)細菌の系を用いた抗変異機作の検討:MMTSはE. coli B/r WP2株において,紫外線のほかは4-nitroquinoline-oxide (4-NQO) 誘発突然変異のみを中程度(陽性対照の46.9%まで)に抑制し,紫外線型変異原によるDNA損傷を特異的に除去修復する作用であることが示唆された。 (2)タンパクSH基修飾剤の抗変異作用とその構造活性相関の検討:E. coli B/r WP2株の紫外線突然変異の系で,24種の含硫化合物について抗変異原作用を検討し,SH基と反応性を持つthiosulfonates, disulfides, irreversible SH-blocker, sulfoxideの9種化合物に顕著な活性を認めた。また,タンパクSH基と同様な反応性を持つbenzyl isothiocyanate, phenetyl isothiocyanate, phenyl isothiocyanateにも抗変異原活性を認め,SH基の修飾が抗変異活性発現の要因になっていることが示唆された。 (3)SH修飾剤の標的部位に関する検討:E. coli B/r WP2株でホロン処理による細胞内グルタチオンレベルの低下は抗変異作用と関連しないことを確認した。また,E. coli B/r WP2株で,MMTS処理は除去修復酵素タンパクUvrAの産生を顕著に誘導し,E. coli B/r WP2/pLC1株(温度感受性uvrA発現株)とE. coli B/r WP2/pHE6株の比較からUvrAの過剰発現が紫外線突然変異を抑制することを確認した。これらのことから,SH修飾剤の標的部位は細胞内グルタチオンではなく,特定のタンパク,例えば,UvrAタンパクまたはその発現制御系のタンパクSH基であることが強く示唆された。 2.培養細胞系を用いた抗変異・抗発がんプロモーション作用と作用機作の検討 JB6培養細胞をMMTSで予め1〜2時間処理したのち,TPAでプロモーションを誘導した場合に,軟寒天コロ-形成試験で陽性対照の35%まで悪性腫瘍化が抑制された。これにより,動物での化学発がんのプロモーション段階での抑制機作解明への手がかりが得られた。
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