研究概要 |
(A)ラットcdc2プロモーターの解析。プロモーター中のエンハンサー配列(-276〜-265配列)に結合する蛋白因子,cdc2E1、cdc2E2の抗体を作製し、G1進行期での発現レベルをウエスタン法で調べた結果、ともにほぼ一定であったが、cdc2E2のバンドは4本検出され、その中の1本はエンハンサー複合体の形成が始まるG1後期以降消失することが分った。G1進行各期から調製した細胞抽出液を用いてGST-cdc2E2のリン酸化、脱リン酸化を検討した結果、G1後期以降脱リン酸化が起こることが分った。現在cdc25A,cdc25Bフォスファターゼ等を用い、脱リン酸化とDNA結合能の関連を解析中。エンハンサーの上流に存在するサイレンサー領域をカバーする種々オルゴヌクレオチドの合成、および塩基置換の導入により、この領域のサイレンサー活性は-374〜-360配列に存在することを示した。またこの配列でのDNA/蛋白複合体の形成がG0期で最大で、G1中期より減少し、G1/S境界では殆ど消失すること、この複合体形成のパターンはエンハンサーでの複合体形成と丁度逆の関係にあることが分った。 (B)E1A誘導転写抑制因子の解析。ラット・フィブロネクチン(FN)遺伝子のアデノウイルスE1Aによる発現抑制は、E1Aにより誘導される転写抑制因子G10BPがFNプロモーターの3ヶ所のG-rich配列に結合し、転写因子Sp1の結合を抑制するためと分った。アデノE1Aトランスフォーム細胞より大腸菌で発現するλgt11をベクターとしてcDNAライブラリィを作製しサウスウエスタン法でG10BPと酷似する蛋白因子(GBP-1と命名)をコードする完全長cDNAを単離した。現在GBP-1によるFNプロモーターの活性抑制を詳細に解析中。
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