研究概要 |
【方法と結果】 1.銅異常蓄積のために生後3-4か月において劇症肝炎を起こしたLECラット肝臓からコラ-ゲナーゼ灌流法を用いてoval cellを分離できた。2.肝細胞の分化マーカーとして肝細胞特異的転写因子,前癌病巣をγ-GTP,GST-P,AFP,肝細胞と胆管上皮細胞にはalbumin,cytokeratin 18と19の抗体を用いて、免疫組織的・生化学的により検索した。その結果、肝臓始原細胞の細胞源としてより頻度の多いLECラットを用いて、目的の細胞を容易にしかも大量に得た。分離したoval cellは、現在まで1年間以上長期細胞培養が可能であり、また凍結保存できた。細胞染色法から、γ-GTP,GST-P,AFP,cytokeratin 18と19は陽性であったが、albuminは陰性であった。肝細胞転写因子のうち、HNF-3βmRNAのみが発現していたが、他の4つの転写因子、HNF-3α,HNF-1α,HNF-4,C/EBPはいずれも発現していなかった。さらに3.このoval cellを無アルブミンラットに移植したところ、移植した細胞は肝細胞に形態学的にも変化し、また免疫組織学的にもアルブミンの産生が認められた。以上の結果、oval cellは、胆管上皮細胞と肝細胞の両方の性質を発現する多分化能を有している細胞であることが判明した。 【考察】 LECラットより分離されたoval cellは、肝細胞系と胆管上皮細胞系の両方をあわせ持ち、HNF-3βのみの肝細胞転写因子の発現を認めたことにより、肝臓細胞としては未分化な状態にあると思われた。しかし、肝臓に移植することで、アルブミンの分泌能を持つ細胞に分化しうることが明かにできた。
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