研究概要 |
PC12細胞においてデキサメタゾンにより発現を誘導する系を用いて解析した結果,優性抑制型Ral,Cdc42について,NGFによる神経様突起形成に対して阻害効果がみられた.したがって,これらの因子は正常なシグナル伝達においても重要であることが示唆され,発癌型Rasに特徴的な経路に位置する可能性は低いと考えられた.また,PC12細胞において優性抑制型または活性化型のRho,Rac,Cdc42などをGFPと同時に一過的に発現させ解析を試みているが,さらに系を改良した後,MAPKの活性化をひきおこすが,分化を誘導できないRas変異体と組み合わせて解析を行う予定である. RaplAは,発癌型Rasによりtransformした細胞形態を正常に戻す低分子量GTP結合タンパク質であり,Rasとの相同性は高いが,RalGDSにはRaplAの方が強く,Raf-1にはRasの方が強く結合する.本研究において,Rasの31番目のアミノ酸残基について多種類の変異体を作成し解析を行った結果,31番目のアミノ酸残基がRas型の酸性アミノ酸である場合にのみRalGDSとの結合能が低下し,Rap1A型の塩基性アミノ酸である場合にのみRaf-1との結合能が低下した.つまり,どちらの場合も,Rasの31番目の残基がターゲット側のある残基と反発することが結合能を低下させると考えられ,31番目の残基がRaf-1/RalGDSに対するRas/RaP1Aの特異性を決定する主要な残基であることが明らかとなった. また,RalGDSファミリーに属するRGLのRas結合ドメイン(RBD)について,多次元NMR法により立体構造の解析を行っているが,Raf-1のRBDと似た二次構造をとっているという予備的な結果が得られている.さらに,GMPPNP結合型Rasタンパク質とRGLのRBDとの複合体についてもNMR解析を試みている.
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