研究概要 |
骨髄内の分化初期B細胞、胸腺内の分化初期胸腺細胞の増殖は、SCF,IL7などの正の因子と、我々が本研究で同定したIFNαβあるいはTGFβなどの負の因子によって、適度の増殖が生ずるように制御されていると考えられている。未熟B細胞、未熟T細胞及びその白血病化した未熟リンパ球性白血病細胞に対してIFNαβがどのようなメカニズムでIL7のシグナル伝達を阻害し、さらにアポトーシスを誘導するのかを本研究において究明した。昨年度は、骨髄内の初期B細胞、特にH鎖遺伝子の再構成が生じていないプロB細胞において、IL7依存性増殖を行う細胞に対してIFNαβが強く増殖制御を引き起こすこと、増殖制御はIFNαβが未熟B細胞にアポトーシスを誘導するためであること、プレB細胞以降の成熟B細胞のIL7依存性増殖はIFNαβによって影響を受けないことを示した。本年は、同様の感受性が未熟T細胞においても存在するかどうかを、胎児胸腺臓器培養法(FTOC)を用いて解析した。その結果、IL7依存性増殖過程であるプロT細胞(CD4-,CD8-,CD3-,CD44+,CD25-)からプレT細胞(CD4-,CD8-,CD3-,CD44-,CD25+)に至る過程において、IFNαβはその増殖を強く抑制した。その増殖抑制は、この分化過程に特異的で、より成熟した分化段階のB細胞、T細胞に対してはIFNαβは抑制的に作用しない。また、骨髄内、胸腺内では生理的条件下でIFNαβが産生されていることを示した。このような知見は、未熟免疫細胞由来のリンパ球性白血病細胞に対してIFNαβによる治療が有効である可能性を示唆するものと考えられた。
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