研究概要 |
CISは約260アミノ酸よりなる蛋白質で中央にSH2ドメイン、その両側に80個のアミノ酸からなる機能が未知のドメインを有する新規の遺伝子である。サイトカインによるCISの転写促進の機構を調べるために遺伝子ライブラリーよりCIS遺伝子をクローニングしプロモーター活性を調べたところIL2,IL3,EPOなどに応答して転写促進をうけた。このプロモーター領域にはSTAT5認識配列が4個存在し、サイトカイン依存性に必要であった。CISがJAK-STAT5系の標的遺伝子であることが明かとなった。CISを高発現する細胞を作成しCISがチロシンりん酸化されたIL3受容体やEPO受容体と会合することを見い出した。またCISの過剰発現はEPO受容体によるSTAT5の活性化を阻害した。CISはSTAT5によって誘導されSTAT5の活性化を阻害することから一種の負のフィードバック調節因子と考えられる。 酵母two-hybrid系を利用してJAK2のキナーゼドメインと直接結合しうる分子をスクリーニングした。その結果新規遺伝子JAB(TAK-binding protein)をクローニングした。JABは構造的にCISに類似した分子であり、293T細胞を用いた実験ではJAK1,2,3およびTyk2どのJAK分子とも会合しJAKの自己りん酸化や基質であるSTATのりん酸化を強力に抑えた。ルシフェラーゼアッセイにおいてJABはSTAT3,STAT5の活性化を抑制した。またJABを安定に高発現させた繊維芽細胞はインターフェロンにたいして耐性を示した。したがってJABはひろくJAK-STAT経路の負の調節因子と考えることができる。今後CISファミリー分子のがん化への寄与について検討したい。
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