研究概要 |
ヒト肺非小細胞がんにおいては、第11染色体長腕q21-q23領域のヘテロ接合性の消失(LOH)が高頻度に認められ、がん抑制遺伝子の存在が示唆されるが、この染色体領域の異常に起因すると考えられる遺伝性肺がんは知られていない。そこで、このがん抑制遺伝子を、機能的検定法により単離することをプロジェクトの最終の目的として、まず、当該領域に存在する3種類の酵母人工染色体(YAC)クローンを、ヒト、並びにマウス肺非小細胞がん細胞A549,LLCにスフェロプラスト融合法により導入した。この結果、1つのYACにクローン化された約1.5メガ塩基対の断片の全長が移入された肺がん細胞では、ヌードマウス皮下における腫瘍原性の著名な抑制が認められたが、このYACの一部分の断片や、他の2つのYACの全長が移入された肺がん細胞は、親細胞であるA549やLLCと同様、強い腫瘍原性を示した。このことから、当該YACにクローン化された約1.5メガ塩基対の断片内に腫瘍原性を抑制する活性が存在することが示された。また、79例の肺がんDNAを用いた解析からも、この領域がLOHを示す最小共通領域であることが明らかになった。そこで、肺がん抑制遺伝子の座位をさらに限定化する目的で、当該YACクローンを、酵母内遺伝子相同組換えによって順次断片化し、200,500,800,1,0000,1,100キロ塩基対の断片を含むYACクローンを得た。さらに、この断片化YACをA549細胞に導入して、それぞれ複数の移入肺がん細胞を得た。これらの移入肺がん細胞腫瘍原性を検討することにより、遺伝子の座位を200-400キロ塩基対の領域内に限定することが可能と考えられる。
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