研究課題/領域番号 |
08266107
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
淀井 淳司 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (80108993)
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研究分担者 |
河野 公俊 産業医科大学, 医学部, 教授 (00153479)
若杉 尋 国立がんセンター研究所, がん宿主免疫研究室, 室長 (10112632)
細川 真澄男 北海道大学, 医学部・附属癌研究施設, 教授 (20001901)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
5,200千円 (直接経費: 5,200千円)
1996年度: 5,200千円 (直接経費: 5,200千円)
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キーワード | ADF / チオレドキシン / レドックス / 抗癌剤耐性 / 腫瘍マーカー |
研究概要 |
HTLV-I感染細胞株培養上清中より分離精製されたATL由来因子(ADF)は大腸菌の還元補酵素チオレドキシン(TRX)のヒト相同体であり、その活性部位にあるシステイン残基を介した酸化還元反応により活性酸素消去作用、細胞増殖促進作用、細胞障害防御作用(抗アポトーシス作用)、転写因子の転写活性調節作用などの多彩な機能を有する因子として報告されている。今回、ADF/TRXをはじめとする細胞内チオールによるレドックス制御が腫瘍細胞の持つ生物学的特性、とくに抗癌剤耐性獲得機構にいかに関与しているかを解析し、以下のような結果が得られた。 1)、ADF/TRXの発現増強がシスプラチン、ブレオマイシン、アドリアマイシンなどの抗癌剤に対する耐性獲得機序に関与することが明らかとなった。さらに、ADF/TRXの活性を変化させる薬剤によりこれらの抗癌剤に対する感受性を調節しうること、また、シスプラチンなどの抗癌剤がチオレドキシンリダクターゼ(TRXR)の還元活性を阻害することなどが判明した。以上の結果より、TRX系(ADF/TRXおよびTRXR)は癌治療における新たな分子標的となるうるものと示唆された。 2)、肝細胞癌患者の摘出標本を用いた解析により、肝腫瘍組織におけるADF/TRXの発現量が腫瘍マーカーとして、また、シスプラチン感受性のマーカーとして有用である可能性が示唆された。 3)、サンドイッチELISA法によるADF/TRXの定量法を開発し、肝細胞癌患者の血清中ADF/TRX値が非担癌肝疾患患者及び健常人よりも有意に高値を示すことを明らかにした。血清中ADF/TRX値が肝細胞癌における腫瘍マーカーとして有用である可能性が示唆された。 今後のさらなる検討により、組織、血清中ADF/TRXの定量による臨床診断、ADF/TRXを新たな分子標的とした癌治療など、臨床医学的な応用が期待される。
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