研究概要 |
どの活性型癌遺伝子および癌抑制遺伝子が温熱抵抗性または放射線抵抗性をもたらすかのメカニズムを追求することを目的としている。具体的には,(1)温熱抵抗性または放射線抵抗性癌細胞がどの癌関連遺伝子に変異を持っているかを明らかにする。(2)ヒトおよびマウスの培養細胞に遺伝子操作を行った各種癌関連遺伝子やそのアンチセンス遺伝子を導入し,それらの細胞の温熱抵抗性および放射線抵抗性の変化を調べる。(3)変異をもった癌関連遺伝子産物がどのようなしくみで温熱や放射線に対する抵抗性を獲得することに働くかを明らかにする。 癌細胞の温熱感受性を担う遺伝子としてp53・TNF・E1A・Kuなどの癌関連遺伝子群が同定され,遺伝子操作による突然変異をもたせた遺伝子やアンチセンス遺伝子の導入による温熱感受性を制御することができた。また癌細胞で温熱処理によって引き起こされる形質発現誘導のしくみが,放射線によって誘発されるシグナルトランスダクションによく似ており,プロテインキナーゼC (PKC)を介していること,p53の遺伝子型によることも明らかにされた。一方遺伝子損傷を伴わない低温や低pHによってもp53を中心としたシグナルトランスダクションが誘導されることが明らかにされた。さらに放射線や制癌剤と温熱との併用では,温熱によって誘導されるHSP72の誘導を抑制することによって癌細胞の温熱感受性を増強することがわかった。このように癌細胞の温熱感受性に関わる遺伝子群の同定とは温熱感受性の制御が遺伝しレベルで行えるようになってきた。
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