研究概要 |
ポジトロン断層(PET)により得られる腫瘍の代謝・増殖の指標と、シングルフォトン断層(SPEAT)により得られる腫瘍のP-蛋白の指標を用いて、耐性癌のin vivo診断法および耐性克服治療のモニタリングに有用な画像診断法を開発するための基礎研究を行った。マウス白血病細胞P388とビンクリスチン耐性で多剤耐性を担うP-糖蛋白の発現が証明されているP388VCRを6週齢CD1マウスの鼠径部に皮下移植して固形腫瘍を作製、アイソトープ実験を執行した。ヘキサキス(2-メトキシイソブチルイソニトリル)テクネチウム(99mTc)(MlBl)76μCi, 18Fフルオロデオキシグルコース(FDG)28μCi, 14CL-メチオニン(Met) 1.33μCi, 3Hチミジン(Thd)1.67μCi,を0,25mlの生食に溶解し静注、経時的に、腫瘍・血液・筋・心筋への分布を調べた。組織サンプルは半減期とエネルギーの差を利用した、ガンマカウンター及び液体シンチレーションカウンターにて分別計測した。核種間の混入は、最大でも99mTc計測時の18Fからの混入が0.3%であり無視できた。結果:腫瘍へのMlBlの集積は他のPET薬剤に比べて著名に低く、FDGの十分の一程度であった。また、MlBlの集積はP388に比べて多剤耐性のP338VCRで有意に低く、排泄が早かった。これは、固形腫瘍においても、MlBlがP-糖蛋白によりP388VCRから排泄されているものと考えられた。逆に、FDG・ Met・ ThdのすべてでP388への集積がP388VCRよりも高かった。P388の増殖はP388VCRよりも早く、これらのトレーサーは細胞増殖を反映しており、多剤耐性とは関係ないことを意味する結果であった。MlBlの腫瘍集積は低く、腫瘍検出能は、FDGに大きく劣ることから単独での腫瘍診断には困難が伴う。FDG-PETにより腫瘍の範囲と悪性度を診断し、SPECTによりその部位のMIBIの動態を調べ、多剤耐性の有無を判定するのが最も良いと思われた。
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