研究分担者 |
中里 洋一 群馬大学, 医学部, 教授 (10106908)
斉藤 吉弘 群馬大学, 医学部, 助手 (50170543)
長谷川 正俊 群馬大学, 医学部, 助手 (50251111)
早川 和重 群馬大学, 医学部, 講師 (70114189)
三橋 紀夫 群馬大学, 医学部, 助教授 (20008585)
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研究概要 |
放射線による細胞死の形式の主体を分裂死としてきたことには明らかな誤りがあったことが,アポトーシスの概念が定着するにつれて明らかとなってきた.すなわち,間期死はアポトーシスの形態変化に一致するものであり,しかも,腫瘍によって間期死の出現程度は異なり,放射線感受性の指標の一つとなりうることが,徐々にわかってきたからである.照射数時間後にアポトーシスの所見の出現頻度の高い腫瘍の放射線感受性が高く,低い腫瘍の放射線感受性が低い傾向があることがわかった.一方,照射によって放射線抵抗性株となった腫瘍細胞には放射線誘発アポトーシスの発生が極端に低下していることがわれわれの研究でわかった^<2)>.また,照射後アポトーシスが高い頻度で発現する時期はインビトロの系では4〜6時間であることがわかっている。したがって,放射線感受性を知る手段としては,1回のみ照射して,4〜6時間後に組織標本を作成してアポトーシスの出現程度をみれば,放射線感受性の高低を予測することが可能となるはずである.しかし,臨床症例では,照射後の組織片を採取することには限界がある.そこで,放射線誘発アポトーシスの先行指標が存在するか否かを探しべく,アポトーシス誘導に関与するとされているがん関連遺伝子あるいはその産物の発現を免疫組織化学的に検索し放射線誘発アポトーシスとの関係を明らかにすべく検討した.これまでの我々のヒト腫瘍の研究経過からは各種の悪性腫瘍でp53の発現が認められているが,野性型p53をもった脳室芽細胞腫の一例では,p53依存性の放射線誘発アポトーシスが多数みとめられ,放射線感受性もきわめて高いという,興味ある知見がえられ今後さらに追求するに足る系であることがわかった.しかし,その他の多くのヒト腫瘍では,変異型のためかp53非依存性で,p53の検出がアポトーシスの先行指標に,ただちにはなりえないこともわかった.
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