研究概要 |
(1)高度好塩菌Haloferax volcaniiのATP駆動型多剤排出輸送担体:Hf.volcaniiの多剤排出輸送体はATP駆動型であり,P-gpとその生化学的性質が類似していると考えられる.現在,本輸送体をクローニング中である. (2)Hf. volcaniiの多剤排出輸送体の基質であるロ-ダミン123の取り組み定常値に対する種々の阻害剤(輸送基質)の影響:蛍光色素ロ-ダミン123を細胞懸濁液に添加すると,色素の細胞内への取り込みと多剤排出輸送担体による排出が定常状態に達する.阻害剤または輸送基質を添加すると,色素の排出が抑えられるために,細胞内蓄積量が増加する.この実験の結果は排出輸送体に少なくとも2つの経路があるのではないかと想像出来た. (3)Metabolic stressの概念の提案:Hf. volcaniiの野性株には弱いながらも多剤排出活性がある.この野性株をグルコース,フルクトース等の存在下で培養すると,培地中に排出される薬物は存在しないのに強い排出活性を持つようになる.糖だけでなく,大過剰のアミノ酸存在下の培養でも活性の上昇が見られる.栄養物が大過剰に存在する条件のもとでは,代謝によって通常生成しない物質が出来,それがinducerとなって輸送体が発現するのではないかと想像した. (4)Enteroccocus hiraeのATP駆動多剤排出の発見と高塩耐性:E. hiraeのATP駆動型多剤排出活性の高い変異株を分離した.興味あることにこの株は高塩耐性をしめし,排出輸送体の基質を添加すると高塩耐性がなくなった.この事実は浸透圧とP-gpの関係を連想させ,興味深い.
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