研究概要 |
研究計画に従って、plCln,ClC-k1,SMITの抗ペプチド抗体を検出手段として腎組織中のそれぞれのチャンネル、トランスポーターを分離精製を試みた. plCln:脳、肺、心筋、肝、腎の膜分画と可溶分画の双方にこのチャネル蛋白は存在していた.膜分画のplClnはミトコンドリアに局在することが明らかになった.plClnはバクテリアの細胞質にあって必要に応じて膜に出現するチャンネルporinと極めて類似した性質をもっている.ミトコンドリアが進化論的にバクテリア由来であるとすれば、porinと類似した動態によってミトコンドリア外膜にチャンネル機能を発揮しているであろう.当然ミトコンドリアの内膜と外膜の間の浸透圧、Cl濃度の調節に機能しているものと推定される. SMIT:ミトコンドリアと細胞表面膜に存在する分子の大きさは著しく異なっていた.細胞表面膜のものは57-kDa、ミトコンドリアのものは66-kDaで、cDNAからの推定値79.5-kDaより著しく小さい.表面膜の20-kDa分の不足分は用いた抗体に対するエピトープからN-末端部分の欠失と推定され、その部分はNa-認識部位と推定されている部分と2-3の膜貫通部分に相当する.SMIT分子のNaに依存したイノシトールの分子レベル輸送機構を本質的に見直す必要が示された.ミトコンドリアに存在することは、ミトコンドリアの浸透圧維持とイノシトール代謝との関係しているものと予想される. ClC-k1:用いた抗ペプチド抗体は意外にもこのチャンネル蛋白ではなく、新しい腎固有の2種の蛋白であった.その精製に成功した.
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