研究概要 |
我々は今までにモルモット胃壁細胞基底側膜にETb受容体の存在とそれにカップルするMaxi‐Cl^-チャネル(300ps)と、非刺激時にみられる細胞外溶液pHに感受性をもつMini‐Cl^-チャネル(<1ps)の存在を見出し、それらの電気生理学的、薬理学的性質の違いを明らかにしてきた。本年度の分担研究では、この両者のチャネルに関与する細胞内情報伝達系を明かとすることを目的とした。その結果この両者のチャネルは細胞内Ca^<2+>,cyclicAMP,cyclicGMP,GTPrS,および細胞容積変化には依存性を示さなかった。また酸分泌刺激剤、プロトンポンプインヒビターに対してもなんらの感受性を示さず、アラキドン酸、プロスタグランヂン、H‐7等も作用を示さなかった。 しかしながら、Maxi‐ClチャネルはTyrosine Phosphatase 阻害剤であるVO_4で著名な抑制が見られた。一方Serine/Threonine Phosphatase阻害剤であるOkadaic Acidでは抑制されなかった。このことはMaxi‐Cl^-チャネルがTyrosine Phosphataseにより活性化される可能性を示している。また細胞内にGTPrSを存在させた状態でET‐1で刺激を行うと、単にMaxi‐Cl^-チャネルを抑制するのみではなくさらにMini‐Cl^-チャネルの抑制も認められた。しかしGTPrS存在下でのETb受容体agonistであるIRL1620刺激ではMini‐Cl^-チャネルの抑制は見られずMaxi‐Cl^-チャネルの活性化が認められた。GTPrS単独ではこの両者のチャネルに作用を示さないことから、この抑制作用は何らかのG蛋白とETb受容体以外のET受容体とのクロストークにより引き起こされると考えられた。
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