研究分担者 |
高橋 一郎 帝京大学, 医学部, 講師 (40091045)
服部 俊夫 京都大学, ウイルス研, 助教授 (30172935)
松下 修三 熊本大学, 医学部, 助手 (00199788)
三隅 将吾 熊本大学, 薬学部, 助手 (40264311)
古石 和親 熊本大学, 薬学部, 助手 (40238663)
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研究概要 |
HIV-1固有の産物に直接作用する阻害剤等はウイルスの持つ易変異原性のため,耐性ウイルスの出現を容易にし,人類のエイズ制圧の夢を打ち砕いている。申請者等は細胞性因子に一次的に作用し,その結果,bystander効果的にHIV-1を不活性化する生化学的反応を考え,タンパク質のN-ミリストイル(N-Myr)化反応に着目した。 HIV-1潜伏感染細胞(ACH-2,2×10^5 cells/ml)を,最終濃度が50μMになるようにN-Myr化阻害剤を投与し,24時間培養後,ホルボールエステルによりウイルス産生活性化した後,さらに24時間培養した。細胞は経時的に回収し,western blot分析,培養上清中のp24抗原定量,及び逆転写酵素活性測定を行い,抗HIV活性を測定した。対照として,N-Myr化阻害剤未処理HIV-1潜伏感染についても同様に実験を行った。 N-Myr化を阻害した結果,ウイルス構成gagタンパク質前駆体Pr55の細胞内蓄積及び培養上清中の娘ウイルス感染性の消失が認められた。しかしながら,培養上清中のp24抗原量および逆転写酵素活性において,対照実験と有意な差は認められなかった。このことから,N-Myr化阻害剤は娘ウイルスの感染性を消失させることが明らかになった。 また,N-Myr化阻害剤処理及び未処理HIV-1潜伏感染細胞から産生される娘ウイルス粒子の形態を,透過型電子顕微鏡により観察した結果,N-Myr化阻害剤処理HIV-1潜伏感染細胞から産生される娘ウイルス粒子の形態は,涙型を呈し,正常な娘ウイルス粒子の形態とは著しく異なっていた。さらに,免疫電顕法によりgag及びenvタンパク質の感染細胞内局在観察した結果,N-Myr化阻害によるgag-envの会合の阻害及びenvタンパク質の発現抑制が認められ,bystander効果剤が画期的な抗エイズ剤になりうることを明確にした。
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