研究概要 |
gp160がいかにして細胞内Ca^+上昇を導くかについて検討するために、各種シグナル伝達阻害剤でUE160を前処理したところ、CaM阻害剤であるW7がCa^+上昇を阻止することがわかった。Srinivasら(J.Biol.Chem.286:22895,1993)のCell free productを用いた実験ではCaMはgp160に結合すること、同様の実験系を用いたMillerら(AIDS Res.Hum.Retroviruses 9:1057,1993)の検討でCaMはgp160 C末端の約20アミノ酸残基に結合能を示すこと等より、細胞内でgp160がCaMに結合することがCa^+上昇への引き金になることが推測された。この事を実証するために、C末端が種々の長さで欠損した変異gp160を発現する細胞株を作りさらに検討した。その結果、C末端の5アミノ酸残基以上を欠損したgp160は細胞内でのCaMとの結合が消失し、かつCa^+上昇も引き起こさなくなることがわかった。また、gp160と結合したCaMはその補酸素活性が有意に上昇することも確認された。Nicoteraら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:453,1989)は、核内Ca^+濃度はCaMによって賦活されるCa^+ポンプによって調節されると報告している。以上の知見より、gp160が直接CaMに結合することでCaMを活性化し、活性化CaMによってCa^+ポンプが作働し、核内Ca^+濃度が上昇すると予想された。
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