研究課題/領域番号 |
08270209
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 洋 東京大学, 薬学部, 教授 (00012625)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1996年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 記憶・学習 / 海馬 / 長期増強 / 水迷路学習 / 神経栄養因子 / シナプス伝達 |
研究概要 |
神経栄養因子には数十種類以上あることが明らかにされつつある。従来は、栄養因子は神経細胞の生存維持、分化促進、突起形成や伸展の促進などといった長期作用が主に考えられてきたが、神経伝達などを調節する短期的な作用も次第に明らかにされてきた。その中で、ニューロトロフィンの一種である脳由来神経栄養因子(BDNF)は、その受容体とともに発現量が生後に増加し、さらに海馬のシナプス伝達を増強する作用があることが示唆されている。他の栄養因子は胎生期の発達に重要な役割を果たしていると考えられる。従って、BDNFが成長後にシナプス可塑性を調節している生体内因子として働いている可能性が考えられた。そこでラット海馬シナプス伝達に及ぼすBDNFの作用機序をスライスパッチクランプ法を用いて解析した。予想に反してグルタミン酸神経伝達には影響しなかったが、抑制性のシナプス後電流を抑制することが分かった。この作用は、カルシウムキレート剤および受容体型チロシンキナーゼ阻害薬で遮断された。また、BDNFはGABA誘発クロライド電流も抑制した。従って、BDNFはシナプス後細胞の細胞内カルシウムを上昇させることによって抑制伝達からの脱抑制を引き起こし、グルタミン酸伝達を増強することが明らかになった。さらに、脳弓海馬采を切断して空間学習能力を阻害したマウスの脳室内にBDNFを投与すると学習の改善が観察された。以上のように神経栄養因子を用いた実験においても空間学習と海馬のシナプス可塑性の関連性が示唆された。
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