当研究チームは、ラット脳の微小領域単位で、広域調節系神経伝達物質[ドーパミン(DA)・ノルエピネフリン(NE)・セロトニン(5-HT)]の定常水準・遊離の連続時間追跡・誘発を行った結果、全脳や局所の限定追及では求め得ない明確な領域・時間特性が観測され、時空的、系間比較した結果、此等の“前シナプス過程"には、複数の時間特性を持つ内在性の“動的コード(Dynamic Codings)"の階層が存在し、特に5-HT/NE定常水準の反極性24h周期の遷移と此のCodingの脳幹・視床・視床株・海馬、皮質等の領域間の順位相・他領域での逆相同調を典型とする“系・領域間関連"、又、上行性調節系稠密投射を受ける皮質・辺縁系調節系起始領域で、脳基調調節領域である中隔縦束(MSDB)や前脳基底部に於いては、3つのアミン系定常水準共優勢と著明なDA/NE定常水準の逆極性短周期(2-3h)同調、及び、誘発応答特性に基づくDA/NEの非小胞体遊離機構優位の示唆、等が示された。此等の内在代謝Codingsの幾つかは、覚醒・睡眠や行動など生理的脳基調の相交替の内在時間特性に密接に関連し、5-HTの血中前駆体Trp酵素的(TSO)分解による迅速可逆的全脳5-HT除去擾乱に際しては、5-HT/NE水準遷移は解消する一方、意識の水準(覚醒・睡眠)と行動相の24時間周期交替は分単位短周期に崩壊した。此の際、微小領域のMultiunit Activity追跡から、生物時計候補視覚交差上核明期優勢日周律動は完全維持、これに反極の皮質、視床活動の消失も著明でなく、MSDBなどの少数領域に、活動の日周律動消失・短周期化が観測されている。此の事実は、5-HT系擾乱が、偏在する時計機構と脳基調の結合の擾乱、又は、特定局所でのSCN時間伝達・発現機構の遮断、の可能性を示唆するものである。
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