研究概要 |
中枢神経系における分子量130-kDaの新規イノシトール1,4,5-三リン酸[Ins(1,4,5)P_3]結合蛋白質の機能を解明するためのステップとして以下の実験を行った。 1.本分子はホスホリパーゼC-δ_1(PLC-δ_1)とアミノ酸配列上は類似しているものの触媒活性を持っていない。その原因を活性中心のアミノ酸配列の変異にあるのではないかと考え、PLC-δ_1の活性中心と考えられているX-領域やY-領域を130-kDa分子の相当領域と置き換えた、リコンビナント蛋白を作製するためのプラスミドを作製した。遺伝子配列は確認したので、今後大腸菌で過剰発現させ、活性測定などの実験を行う。 2.本分子の遺伝子をネオマイシン耐性遺伝子とともに組み込んだプラシミドをCOS-1細胞にトランスフェクトした。抗生剤存在下でクローニングすることにより、本分子を安定に発現する細胞の作製に成功した。7回膜貫通型受容体刺激や成長因子刺激にもとづく細胞機能の修飾現象を検討して、本分子の細胞内機能を推定していく。 3.本分子もPLC-δ_1と同じくプレックストリン相同領域(PHドメイン)を有した蛋白質である。どの領域がイノシトールリン酸結合領域であるのかを検討するため、本分子のさまざまな部分が欠失するように種々の遺伝子を作製し、COS-1細胞にトランスフェクトした。それぞれについて細胞上清の[^3H]Ins(1,4,5)P_3結合を測定したところ、PHドメインを欠いた分子が結合活性を欠いていたので、結合領域をPHドメインに帰納できた。また、Ins(1,4,5)P_3のみならずIns(1,4,5,6)P_4も結合することが分かった。これらの結果から、種々の蛋白質にあるPHドメインはそれぞれ固有のイノシトールリン酸を結合することによりその機能を発揮するのではないかと提案した。
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