研究概要 |
神経活動に伴う膜脱分極は、神経細胞の生存・機能維持及び形成されたシナプス結合回路の長期的な安定性をもたらすと予想される。ラット上頚神経節(SCG)の培養系についての膜脱分極下で発現の変化する遺伝子の探索、及びSCG細胞のNGF除去後の細胞死に関し膜脱分極によるNa+の流入に依存した神経細胞生存/死制御の機構の存在を明らかにした。 1)神経細胞の脱分極に伴い遅延性に発現する遺伝子の単離 SCG細胞を用いて高カリウム処理による脱分極に伴い遅延性に発現の変化する遺伝子をRAP-PCR法を用いて探索した。対照と比較したところ、25本のバンドに変化が見られた。それらのクローニングを行い、15本のバンドに関したcDNAを持つと思われる約50個のプラスミドを得た。脱分極に対する応答の再現性を確かめる為、プラスミドDNAをドットブロットしたメンブレンを準備し、レバースノーザンを行った。その結果、高カリウムによる脱分極処理で発現の増加する3種のクローン(RAP1-11,1-16,3-2)と発現の減少する3種のクローン(RAP1-2,2-9,4-24)について再現性が確かめられた。うち4本(RAP1-2,1-11,3-2,4-24)に付いてシークエンシング、ホモロジー検索を行ったところ、3本は未知で、1本(RAP1-11)は、登録はあるが機能の不明なヒト脳で発現する遺伝子クローン36066と高い相同性があった。 2)ベラトリジンによる脱分極に伴うナトリウム流入に依存した神経細胞の生存 ベラトリジンはNa+チャンネルの活性化剤である。1μM以下の濃度ではNa+の流入のみが観測された。更に低濃度のベラトリジン(0.25〜0.75μμM)は細胞死を遅延せることがわかった。この細胞死遅延効果は明らかに細胞外のNa+に依存しており、ベラトリジンによる細胞内Na+濃度の増加と相関していた。このことは、神経細胞の生存/細胞死制御に関しNa+を介した機構が存在することを示唆している。
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