研究課題/領域番号 |
08271216
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大森 治紀 京都大学, 医学研究科, 教授 (30126015)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1996年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
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キーワード | 聴覚 / 台形体内側核 / シナプス伝達 / 個体発生 / NMDA / non NMDA |
研究概要 |
哺乳動物の聴覚中枢核である台形体内側核(MNTB)では、大きな神経終末が球形の神経細胞体に直接シナプス形成し、時間経過の速い大きな興奮性シナプス後電流が発生する。聴感覚の中デモ音源の方向を同定する機構に関与し、揺らぎの少ないシナプス伝達が行われている。しかし、シナプス後細胞での興奮性シナプス後電流を詳細に解析すると、生後の発達段階に応じて、シナプスの持つ伝達特性が変化することが明らかになった。すなわち、生後まもなく(生後2‐3日令)はMNTBへのシナプスも時間的サイズ的に大きな揺らぎを示し、生後9日令を境に、シナプス伝達の精度が向上することが明らかとなった。一方、シナプス電流はシナプス後細胞で2種類のグルタミン酸受容体(NMDA型およびnonNMDA型)を活性化することにより行われる。この2種類の受容体の存在発生期間内(生後2日令から14日令)において変わらなかった。シナプス後細胞で記録される電流の大きさは、シナプス前終末での伝達物質の放出部位、放出確率、そしてシナプス後細胞体での個々のシナプス後電流のサイズから定まる。しかし、シナプス前終末における伝達物質の放出は個々の放出部位で常に一様ではなく、一回一回の試行毎に伝達物質の放出される割合が異なり、放出確率で表現される確率過程となる。MNTBでのシナプスでは生後間もなくは非常に大きな揺らぎがシナプス後電流に観察され、生後発達に伴い揺らぎがおよそ1/10程度まで小さくなった。揺らぎを詳細に解析することによって、シナプス伝達物質の放出確率が生後発達に伴い大きく増大することが明らかとなった。さらに、シナプス前終末でのCaイオン電流が生後発達に伴い増加することが明らかとなり、伝達物質放出確率が増大する要因の一つであることが示された。すなわち、シナプス伝達精度の生後発達は多くの部分がシナプス前終末におけるCaイオンチャネルの量的な増大によって実現されていることが本研究によって示された。
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