研究概要 |
4Eのニワトリ胚脊髄から、運動ニューロン特異抗体SC1を用いたpanning法により頸部、胸部、および腰部運動ニューロンを精製し、得られたRNAについてdifferential display法を行い、腰部運動ニューロンに発現し胸部運動ニューロンには発現していないcDNA(_X37)を同定した。in situ hybridization法により、_X37の発現を検討しところ、軸索伸長期である4E, 6Eでは四肢を支配する運動ニューロン(Lateral motor column, LMC)全体に見られるが、体幹を支配する運動ニューロン(Medial motor column, MMC)には全く発現していなかった。シナプス形成の終わったE10ではLMCの一部に限局し、それ以降での発現は見られなかった。また運動ニューロン以外の組織における発現は検出されなかった。これらの結果からこの分子は、四肢の運動ニューロンが特異的に標的筋肉を支配する過程にかかわると考えられる。 _X37には2種のcDNAがあり、それぞれ分子量約8万の膜貫通型の分子(Long form, L型)と、L型の構造のうちアミノ末端側の220残基を欠くShort from, S型の2つのisoformをコードすると考えられる。L型は、その構造から接着因子であると考えられるがS型はこれまで報告がない。我々は、S型が、L型の持つ接着能をドミナントネガティブに阻害する事によってその機能を発揮すると予想し、これを証明するため現在細胞レベルでの実験を行っている。 この様な接着活性の制御機構はこれまで報告が無く、今回単離された分子の機能は接着活性の調節機構に新たな概念をもたらすと期待される。今後、細胞レベルでの実験に加えて、ターゲットマウスの作製による生体内での機能解明を目指したいと考えている。
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