研究概要 |
M期の終了にはサイクリンBの分解に依存したMPFの不活性化が必要であり、サイクリンBはM期中期から後期の移行期に分解される。このサイクリンBの分解はユビキチン化に依存したプロテアソーム系を介して行われると考えられている。ユビキチン化はE1,E2およびAPC(Anaphase-promotingcompex)またはサイクロソームと呼ばれる複合酵素系で行われると考えられているが未だその酵素活性の調節機構は明らかになっていない。そこで哺乳動物細胞を用いたサイクリンBのユビキチン化の系の開発とともに、ユビキチン化酵素の同定を試みた。バキュロウイルス系で発現させたGST-サイクリンB融合蛋白質/cdc2複合体、ビオチン化ユビキチンを基質として、マウスユビキチン活性化酵素(E1)とHeLa細胞の抽出液を酵素源としたin vitroサイクリンBユビキチン化の系を確立した。この系に大腸菌で発現させた各種ヒトユビキチン輸送蛋白(E2)を添加したところUBC4とUBCH5はサイクリンBのユビキチン化を著しく促進したが、UBC3、E2-EPFには促進効果はなかった。一方最近、クラム、XenopusサイクリンB特異的E2-C,UBCxが単離された。我々はそのヒトホモログhE2-Cを単離し、サイクリンBのユビキチン化を調べたところ活性は分裂期抽出液存在下で高く、しかもサイクリンB単量体よりもサイクリンB/cdc2複合体が良い基質となった。そのことからここで単離したhE2-CはサイクリンB特異的E2として働き、M期特異的E3の存在下にサイクリンBのユビキチン化を行うと考えられた。一方染色体脱凝縮が温度感受性であるtsTM13細胞はこのユビキチン化酵素活性が低いとの結果が得られた。即ちこの変異細胞では高温でサイクリンBのユビキチン化が欠損していることによりM期からG1期への移行が行われないと考えられる。
|