真核生物では、DNAは折り畳まれ、クロマチン構造を形成している。クロマチン構造は複製、転写、組換え等の生物機能を制御しており、また、上記の生物機能を担う因子はクロマチン構造の変化を誘導することがある。本研究ではクロマチン構造の変化を誘導する因子を減数分裂期組換え機構を主として検討する。 減数分裂期において、組換えとは関係のないクロマチン構造変化がおきる可能性がある。この可能性を二重鎖切断が殆ど起こらないURA3遺伝子を用いて検討した。その結果、URA3遺伝子は5'と3'のヌクレアーゼ感受性領域の間に6つのpositioningしたヌクレオソームをもち、プロモーター領域に隣接するヌクレオソームは2つのポジションをもつクロマチン構造をとることが分かった。URA3遺伝子をヘテロクロマチン領域であるテロメア近傍に導入したときには、構造変化が観察された。また、培地の組み合わせにより、このクロマチンの構造変化が転写と関係しているかとが示唆された。一方、減数分裂の過程においては、クロマチンの構造変化は見られなかった。 二重鎖切断が蓄積されていく、rad50s変異株を用いて、組換えのホットスポットの一つであるYCR47c-YCR48w領域のクロマチン構造をprimer extentionを用いて解析した。その結果、この二つの遺伝子の間のヌクレアーゼ感受性領域に両遺伝子のプロモーターが存在し、28箇所の二重鎖切断部位の全てがこの領域に存在することがわかった。このことは、二重鎖切断はクロマチン構造をとっている領域には起きず、ヌクレオソームの無い領域に起きることを示唆している。primer extention法はバックグランドのノイズが高く、微妙なクロマチンの構造変化の検出には不向きである。ノイズのほとんど無いsequence gelでのsouthern hybridazation法を用いて、解析を行っている。
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