研究概要 |
最近,ヒトのY染色体の解析が進むにつれY染色体上にも様々な遺伝子が存在することが分かってきた。特に,生殖細胞の分化,男性機能に関する遺伝子に注目が集まっている。我々は,ヒトY染色体の構造を研究してきたものであるが,Y染色体の構造異常と症状の検討から,無精子症遺伝子を長腕真性クロマチン部のもっとも遠位端に,また成長を規定する遺伝子を長腕の近位部にマップした。これらの遺伝子をクローン化し,その働きを知ることが本研究の目的である。 Y染色体上には精子形成に関与するいくつかの遺伝子があると考えられている。外国の研究者がYRRM遺伝子,SMCY遺伝子,DAZ(deletion in azoospermia)遺伝子などを精子形成に関与している候補として発表した。現在までのところ我々の研究でも,他の研究室でもこれら候補遺伝子の点突然変異による無精子症は認められていない。したがって、これらとは別のより重要な遺伝子が存在すると考えている。 Y染色体長腕欠失の父子例(父親が妊性があるのに息子は無精子)に注目し,欠失近位側の切断点を含む領域のYACからコスミドコンティーグを作成し、父子間の欠失の差を見つけだすことを目指した。しかし,この過程で我々が解析している長腕の領域には,短腕に相同な部分があり通常の解析では区別できない場合があることが分かった。今まで単一コピーのDNAとして解析していたものが、実は複数ある前提で解析を進めることにし,切断点を含むと考えられるYACyOX21から図のようなコスミドコンティグを作る一方,コンティグに含まれるコスミドの局在のチェックのためにFiber FISH法の導入を試みた。その結果,コスミドの全てが短腕に相同領域をもつこと,また長腕の比較的狭い範囲に同様の配列が4コピー以上あることが分かった。
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