遺伝子組み換えに必要であると考えられているシナプトネマ複合体を含めた減数分裂特異的な核構造の形成・機能及び配偶子形成の過程で見られる核構造の大きな形態変化のメカニズムを明らかにするため生殖細胞の核構造に着目し、特に現在はラミンと呼ばれる核膜タンパク質に着目し、我々は研究を進めている。ラミン群タンパク質は脂質2重膜、核膜孔複合体、及び核ラミナの3種類の構造体から構成されている真核生物に特徴的な核ラミナを構成する主要なタンパク質として体細胞において同定された分子群であるが、我々は減数分裂パキテン期細胞より生殖細胞特異的なラミン及びラミン様タンパク質としてラミンB3、C2及びMNS1の単離に成功している。これらのタンパク質は体細胞型ラミンと類似した2次構造をしているものの非常にユニークなアミノ酸配列を持っており、さらにラミンB3とMNS1に関しては体細胞由来の培養細胞で強制的に発現させた研究より、発現したタンパク質が重合し体細胞の核形態を変形させる能力があることも見出している。 本年度は生殖細胞特異的なラミン及びラミン様タンパク質に対する抗体を作成すると共にMNS1の特性を生化学的及び分子遺伝学的に解析を試みた。抗体に関しては大腸菌において作成したタンパク質を強く認識するものが得られたので、生体内でのラミンB3及びMNS1タンパク質の局在を現在検討中である。MNS1に関しては、このタンパク質は重合するがそれにはタンパク質のC末端側が重要である知見が得られた。またMNS1は核成分と強く相互作用している事を推定させる結果がこれまでの研究より得られていたが、核ラミナの主成分であるラミン群タンパク質との相互作用は検出できなかった。現在MNS1の特性を明らかにするため2-ハイブリッド法を用いこれと相互作用するタンパク質の単離を試みている。
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