研究概要 |
本年度は、以下の3点について成果を得た。1.Mre11などのDNA二重鎖切断に関わる遺伝子産物が組換えホットスポットに相互作用し、DNAの受容性変化をもたらす可能性が示唆されている。これらのいくつかの因子について、大腸菌とバキュロウィルス-昆虫細胞系を用いて大量発現系を構築し、因子のDNAとの相互作用について解析を開始した。2.分裂酵母のade6M26は、ade6ORFに生じた点突然変異に起因する減数分裂期特異的なホットスポットで、変異箇所を含む7塩基配列がホットスポット活性に必須である。ホットスポットにおけるクロマチン構造の役割について一般性を検討するため、ade6M26のクロマチン構造を解析した。その結果、M26に依存して変異箇所周辺で顕著なクロマチン構造の再編成が起きていることを見出した。また、出芽酵母と同様のDNAの受容性の増大が認められた。以上の結果は、減数分裂期組換えの開始に関するクロマチンレベルの制御が、種を越えて保存されている可能性を示唆する(水野ら,Genes & Development,印刷中)。3.出芽酵母の染色体に大腸菌プラスミドDNAであるpBR322の配列を挿入すると、強いホットスポットが形成され、そのホットスポットは隣接する天然のホットスポットと競合・不活化する。pBR322由来のホットスポット周辺のクロマチン構造を解析したところ、pBR配列の挿入によって形成されるヌクレアーゼ超感受性部位で、DNAの受容性は減数分裂期に顕著に増大した。一方、その周辺の不活化されたホットスポットでは、超感受性部位は存在したが、減数分裂期におけるDNAの受容性の変化は認められなかった。この結果は、ホットスポットの形成にはクロマチン構造が「開いた」状態になっているだけでは不十分であり、DNAの受容性の変化をもたらす組換え複合体の相互作用が必須であることを示している。
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