研究概要 |
天蚕の卵内では幼虫体が完成し、この状態で長期休眠に入る。これは前幼虫休眠と呼ばれ、従来の中枢神経系による内分泌系では説明できない、新しい非中枢神経系による休眠制御機構の存在が提示されている。休眠を維持する因子(RF)は中胸部から分泌され、後休眠期発育に関与する成熟因子(MF)は第2-5腹節から分泌されていると考えられている。また、これらはいずれもペプチド様ホルモンと推定されている。 酸メタノール抽出によって、約4,000頭の休眠中の前幼虫と約3,000頭の休眠覚醒期の前幼虫から、粗活性画分を得た。この粗活性画分をTSKgel ODS-80TsカラムのHPLCによって分離したところ、Fraction3にRFとMFの両因子が溶出された。次に、第2回の同じHPLCによって、両因子はさらに部分精製された。特に、MFは第2回のHPLCで水溶出画分に強い活性を示し、第3回のTSKgel G2000SW_<XL>によるゲルろ過HPLCによって、単一ピークとして単離することができた。現在プロテインシーケンサでMFのN末端アミノ酸配列を解析中である。 以上のことから、天蚕の前幼虫休眠に関する新しい2つの因子の簡易抽出差と分離方法を確立することができた。
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