研究概要 |
ヒトPCNAの構造機能相関を探索することを目的として,ヒトPCNA変換体と複製因子C(RFC),DNAポリメラーゼδ(polδ)およびフラップエンドヌクレアーゼ(FEN-1)との相互作用を調べた.以下に,今年度得られた新たな知見等の成果を示す. (1)ヒトPCNAの分子表面に突出する8ケ所のループ領域に出芽酵母の相当する位置のアミノ酸配列を導入したヒト-出芽酵母キメラPCNAを調製し,RFCおよびpolδとの相互作用を解析した.その結果,PCNA単分子中の2つのドメイン間をつないで安定な構造を形成する役割を果たすinterdomain connecting loop領域(118-134番の17アミノ酸残基)がpolδとの相互作用に関与していることが分かった.また,41-45番の5アミノ酸残基からなるグループ領域がRFCとの結合に関与していることが示された. (2)ヒトPCNA部位特異的変換体およびキメラPCNAによるFEN-1のヌクレアーゼ活性の促進効果を5′flap DNAを基質として調べた.その結果,PCNAのリング構造内側の塩基性アミノ酸をアラニンに置換した変換体ではエンドヌクレアーゼ活性の促進効果が低下した.これら一群のアミノ酸は,DNA clampingに機能することから,PCNAとDNAとの相互作用がFEN-1の活性に重要であると考えられた.また,分子表面に存在する21,41,122番目のアスパラギン酸をアラニンに置換した変換体およびinterdomain connecting loop領域を出芽酵母の配列に置換したキメラPCNAでFEN-1のエンドヌクレアーゼ活性の促進効果が低下した.すなわち,これらの領域がFEN-1との相互作用に重要であることが分かった.
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