ヒトデの未受精卵に存在するDNA複製抑制活性は、連続的に合成される蛋白質と(その下流の)MAPキナーゼ活性に依存していることから、まずヒトデ卵成熟過程におけるMAPキナーゼの活性の変動を調べた。その結果、ヒトデの卵成熟開始に際してのMAPキナーゼの活性化には蛋白質合成は必要でないが、卵成熟後、すなわち減数分裂を完了した後ではMAPキナーゼの活性を保つためには蛋白質合成が必須であることがあきらかとなった。このことはMAPキナーゼの活性化に必要な蛋白質はすでに卵母細胞では合成されて母性蛋白質として存在しているが不活性であり、卵成熟誘起ホルモン(1-methyadenine)の刺激で活性化するものと考えられる。現在これらのMAPキナーゼの活性調節の解析から、どの様な経路でS因子が活性化されるかを、MAPキナーゼの上流にさかのぼって追求しているところである。さらに、未受精卵でのMAPキナーゼの不活性化はDNA複製の開始を招くので、ここでのMAPキナーゼの不活性化の機構を知ることは重要である。ここでもまたMAPキナーゼの活性をコントロールしているのは、MEK(MAPキナーゼキナーゼ)より上流の因子であり、その因子の同定を試みている。この因子を精製していったところ、約55kDaの蛋白質がMEKを活性化する活性を持っていることが明らかになった。現在、この酵素の完全精製とアミノ酸配列の決定を急いでいるところである。
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