研究概要 |
Epstein-Barrウイルス産生状態においては複製開始領域Ori Lytから複製は始まり少なくとも複製後期にはローリングサークル型複数様式によりウイルスゲノムは複製され複製中間体としてhead-to-tail concatemerが合成される。研究目的はこのローリングサークル型DNA合成機構を明らかにすることであり、複製フォークで働く蛋白質の個々の機能及び相互作用を解析することである。このウイルスゲノム複製伸長を担うウイルス蛋白質としてBALF5蛋白質、BMRF1蛋白質、BALF2蛋白質、BBLF4蛋白質、BBSLF1蛋白質、BBLF2/3蛋白質が知られている。これまでBALF5蛋白質がPolymerase catalytic subunit, BMRF1蛋白質がPolymerase accessory subunitであることを明らかにしてきた。平成8年度においてはBALF2蛋白質について解析した。BALF2遺伝子をウイルスDNAからクローニングし大腸菌で発現させBALF2蛋白質を精製し、兎に注射してこうBALF2蛋白質抗体を作成した。この抗体を用いたウエスタンブロット法によりEBV産生Bリンパ球よりBALF2蛋白質を各種カラムを通して精製した。精製されたBALF2蛋白質は、MW130kであり一本鎖DNA結合活性をもっていた。primed M13 ssDNAをtemplate-primerとしたEBVDNAポリメラーゼ複合体によるDNA合成系ではBALF2蛋白質はtemplate上に形成される二次構造を解消するように働きDNAポリメラーゼがtemplate上を動きやすくなるように働くことが推定された。BALF2蛋白質は一本鎖DNA結合蛋白質として働くことを明らかにした(Virology 222:352-364,1996)。次にEBVDNAポリメラーゼ複合体には弱いながらStand displacement DNA 合成活性があることを見つけた。primed M13 ssDNAの系にEBVDNAポリメラーゼ複合体をいれるとFull lengthより長いDNAが合成されることが確認された。mung bean nuclease処理により生成産物の長さは7.2kbにまで削られた。また,ATP,ATPγ-Sによってstrand displacement活性は影響されなかった。EBV DNA polホロ酵素のcatalyticサブユニットであるBALF5蛋白質,アクセサリーサブユニットのBMRF1蛋白質をin vitroで再構成させた場合もEBV DNA polホロ酵素の場合とほぼ同様の結果が得られた。この結果は現在投稿中である。
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