研究概要 |
(1)DnaAタンパク質不活性化因子(IdaA)の精製と機能解析 不活性化因子(IdaA)は、野生型DnaAタンパク質の複製活性を特異的に失活させるタンパク質因子である。我々は免疫沈降法を用いて、IdaAにより、ATP結合型DnaAが、複数開始活性がないADP結合型への変換することを明らかにした。また、IdaA機能促進因子をIdaRを見出した。IdaRによりIdaA機能は36倍に促進されることから、IdaRはDnaA不活性化の調節因子であると考えられる。 (2)複製開始に対する正の調節因子の分子遺伝学的同定 まず、H-NSタンパク質とDNAアデニン・メチルトランスフェラーゼが、染色体複製を促進していることを見い出した。さらに、我々は、新たな遺伝子3種actB,C,Dを見出した。actBは複製開始の正の制御遺伝子であり、開始反応の同調性維持に必須であることが明らかになった。actCおよびactDは複製開始反応の促進に必要な遺伝子であることが示された。 (3)複製開始に対する負の調節因子の分子遺伝学的同定 3種の遺伝子を同定し、別の3種を解析中である。同定した遺伝子は、ヘミメチルDNA結合タンパク質seqA、真核生物の26SプロテアソームのホモローグhslU、および、新発見の遺伝子asiAである。AsiAは熱ショック・タンパク質であり変異DnaAの分解に必要であることが明らかになった。さらに、解析中の3種の変異遺伝子(仮にasiD,E,Fとする)のうち、asiDは、野性型dnaA株での複製開始の同調性維持に必要であることが示された。また、asiEおよびasiF変異を単独で保持する株では、それぞれ、細胞体積が、野生型の1/2および1/3になっていた。これら小細胞は、遺伝子欠損によって、細胞分裂周期における複製開始のタイミングが早められたため生成すると考えている。
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