研究概要 |
プロテアソームは、細胞内で不必要になった蛋白質を速やかに分解し、細胞の代謝を安定に保つ代表的な細胞内プロテアーゼであり、細胞の周期制御機構を解明する「鍵」酵素である。本研究では、この酵素の機能の重要性が分子構造の複雑性と密接な関係にあると考え、分子を壊さず分子内部まで明らかにできるX線結晶解析により立体構造解析を行う。 分子量75万という巨大なヘテロ分子集合体として良質の単結晶を得ることができた。この結晶のX線回折実験より、結晶学的データはa=b=121.83, c=930.68A、空間群はP6122であることを明らかにした。また、回折強度データの解析からプロテアソーム分子の温度因子は43Å^2であることが分かった。このことはプロテアソーム分子が異型サブユニットからなる複雑な構造を持つにもかかわらず、分子内に結晶学的な高い対称性を持ち、かつ分子全体として異型サブユニットの配置および構造が原子レベルで高度に制御されていることを意味する。また、結晶系の異なる新しいプロテアソーム結晶を得ることができた。この場合の結晶格子は、a=b=239.32, c=322.8Aであり、先の結晶のa, bが2倍、c軸が3分の1であった。この結晶と先に得られた結晶中でのプロテアソーム分子のパッキングを考えてみると、基本的な六方最密充填の様式を持っているものの、新しい結晶はプロテアソーム4分子が一組になってパッキングしているものと考えられる。本研究で用いているプロテアソームは牛肝臓からのものであり、サブユニット交換の起こる免疫プロテアソームである。サブユニット交換が起こったために4分子一組でパッキングしていることも予想され、現在空間群などを検討中である。
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