研究概要 |
本研究では輻輳眼球運動の増強現象について動物実験を行うとともに、人を被験者として輻輳運動の脳内制御機構、適応機構について研究を行った.被験者には健康なボランティアを用い、実験操作につき説明後同意を得た.いづれの実験についても倫理委員会の承認を得ている. 1)動物実験については高次視覚領(LS皮質)の刺激と視覚刺激の組み合わせにより、数時間から20時間におよぶ輻輳運動の増強が起こるが、この増強のLS皮質部位依存性を検討した.短潜時で対称性の運動を誘発できる領域の刺激と視覚刺激の組み合わせにより有意の運動増強が得られた(吻側部刺激n=6,201【.+-。】35%,mean【.+-。】SEM;尾側部刺激n=7,202【.+-。】22%)のに対して、長潜時・非対称性運動が誘発される領域の刺激では有意な運動増強は得られなかった(吻側部刺激n=7,106【.+-。】12%). 2)人の輻輳運動の適応を研究するための基礎実験を行った.健康な若年被験者17人を用い、両眼視差刺激により仮想的に接近する視標を輻輳眼球運動で追従させた.眼球運動はサーチコイル法・赤外線リンバストラッカーを用いて記録した.120回、約25分の試行により、目標位置に対する輻輳運動についての成績が向上した. 3)輻輳運動に関る脳内部位について東北大加齢研の川島らと共同でPETを用い、輻輳眼球運動に関わる課題遂行中の脳血流変化を記録し、他の課題と比較、分析を行った.解剖学的な標準化を行った後、輻輳課題・非輻輳課題の画像と注視課題の画像との差、輻輳課題・非輻輳課題との差をvoxel毎に求め、studentのt値画像を求めた.輻輳課題により後頭・側頭野、下頭頂小葉、中後頭回、楔部、舌状回、紡錘状回が賦活化された.輻輳課題と非輻輳課題がdifferentialに賦活された領域は後頭側頭野、下頭頂小葉、下前頭回であった.
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