研究概要 |
平成8年度は、ラット視床前核背側亜核(AD核),内側亜核(AM核),腹側亜核(AV核)へPHA-Lを注入し、各亜核から海馬台複合体および周辺皮質への投射について海馬長軸直交断面を使用して調べ、亜核による投射後、投射層の違いを明らかにした。 AD核は主に顆粒性脳梁後部皮質(RSG)と嗅内野への投射が見られた。RSGでは1層表層部、III層の上部2/3に濃密に終止し、VI槽には中等度に終末が分布した。嗅内野では主としてVI層に終止し、I層表層部にも少量の終末が見られた。AM核は無顆粒性脳梁後部皮質(RSA)と嗅内野に投射した。RSAではI層、V層、VI層に分布した。嗅内野では、分離板直下に濃密に分布するほか、I層、VI層にも標識終末が見られた。VI層への分布はAD核からの投射に比して少ない。また、やや太い線維が海馬台分子層に少量認められた。AV核は、海馬台錐体細胞層の最深部と前海馬台I層、外固有層III層とVI層に分布が見られたが、表層の小型細胞領域(II層)には分布がなかった。このうち、AV核の背内側からは前海馬台I層に、外腹側からは前海馬台外固有層の中型細胞領域(III層)へ投射する傾向が見られた。これはAV核内の異なる細胞群が前海馬台の異なる層へ投射することを示唆し、今後検討する計画である。本研究によって、視床前後の亜核ごとに主たる投射皮質領域は異なることがわかった。また同時に、嗅内野ではAD核、AM核からの線維が、RSGではAV核、AD核の線維が終止しており、同一領域への収斂が見られが投射層は異なっていた。このことは、それぞれの亜核からの入力は異なる層の細胞群に終止することを示唆しており、今後領域内の局所神経回路の解析が必要である。
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