研究概要 |
本研究の代表者らは,(6-4)光産物を特異的に認識する1本鎖抗体(64M5scFv抗体)をもとに,ファージディスプレイシステムを用いて,結合能や抗原特異性の異なる新規抗体分子の作製を試みた.以下に,今年度得られた新たな知見等の成果を示す. (1)64M5scFv抗体遺伝子へのランダム変異導入法はMn^<2+>を用いたPCRを選択した.変異型64M5scFv抗体を分子表面に提示したファージライブラリーを調製した後,バイオパニングによるアフィニティセレクションを行った. (2)バイオパニングおよび結合活性の測定の際に抗原となる(6-4)光産物あるいはDewar型異性体等の光損傷を含むオリゴヌクレオチド(d8mer,d(CAAT[]TAAG):T[]T部位は(6-4)光産物あるいはDewar型異性体等の光損傷)は,化学合成し紫外線照射後,高速液体クロマトグラフィーで分離,精製して得られた. (3)得られたscFv抗体の評価にはバイオセンサーシステム(BIAcore)を用い,反応速度論的な解析を行うことを計画した.まず,天然型の64M5Fabおよび64M5scFvと(6-4)光産物を含むオリゴヌクレオチドとの相互作用の解析を行い,それぞれのkassおよびkdissを測定し解離定数Kdを求めたところ,(6-4)光産物を含むd8merに対する64M5scFvのKd値(4.5±0.8x10^<-10>)は64M5FabのKd値(1.5±0.2x10^<-10>)とほぼ等しいことが分かった.すなわち,この解析,評価法は抗体分子の改変を進めていく上で有効であることが確認された. (4)現在,(6-4)光産物あるいはDewar型異性体を含むオリゴヌクレオチドを抗原として,バイオパニングを繰り返し行っている.
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