研究概要 |
XPA(色素性乾皮症A群)蛋白質は273個のアミノ酸からなる分子量約31kの蛋白質で、N末端から105-129残基付近にZnフィンガーあるいはZnクラスターをとりうるCysクラスター領域を持つ。本研究では、このDNA結合ドメインの溶液中の立体構造を決定する事を目的とした。 XPA DNA結合ドメイン(MF122)について、^1H,^<15>N,^<13>C核シグナルのほぼ全ての帰属を行った。さらに水素原子核間の距離情報を与えるNOEデータの解析と、化学シフトの解析からMF122の二次構造を決定した。その結果、XPAのDNA結合ドメインはC末端部分に3.6ターンずつからなる安定な比較的長いヘリックス構造を2個持つことが判った。さらにZnフィンガー付近の二次構造はこれまで知られていたDNA結合性の転写調節蛋白質のものとは異なる新しい構造モチーフを持つことが判った。 種々の3次元、4次元NOESYなどから得られた構造情報を基にXPA DNA結合ドメインの立体構造を計算した。その結果、N末端Znフィンガー部分(30残基)については平均構造からのR.M.S.D.が0.65Åの高分解能の立体構造を得た。4つのCys残基からの配位結合を持つZnフィンガー部分は短いヘリックスと、短い2ストランドからなるβシートを含むものの、全体としてはループ構造の多い立体構造を持つ。2次構造決定の段階で予想したとおり、XPAのC_4タイプのZnフィンガーは転写因子であるGATA-1や核内レセプターの持つC_4タイプのZnフィンガーとは異なる立体構造を持つ。Znフィンガー部分以外のC末端側についての立体構造計算から、予備的なグローバル構造を得つつある。得られた構造は3本のヘリックスが大きなくぼみを形成する様に折りたたまれ、くぼみの内側には正に荷電したクラスターが見られる。
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