研究概要 |
NODマウスは優れたヒト自己免疫性(I型)糖尿病のモデル動物として知られている。本研究の目的は、I型糖尿病発症に関与すると推定されるMHCクラスII抗原およびさまざまなサイトカインのNODトランスジェニックマウスを作製し、導入遺伝子発現の膵島炎、糖尿病への影響を解析することによりI型糖尿病発症機構を明らかにすることである。I-A_β^<d/k>(HS)遺伝子(A_β^<d/k>遺伝子のexon2の5'側半分をA_β^dを置き換え、さらに第56番目(Pro)、第57目アミノ酸(Asp)のコードンを、NODタイプ(His,Ser)に変えた遺伝子)を導入したNODトランスジェニックマウスを作成、繁殖し、膵島炎の程度と糖尿病の発症を追跡した。この遺伝子を導入したI系統のNODトランスジェニックマウスで、末梢リンパ球、胸腺における発現が確認された。これらのマウスで膵島炎発症、糖尿病発症は強く抑制されていた。この結果から、Aβ鎖の56、57番目のアミノ酸のみで疾患感受性が決定されるわけではないことが明らかとなった。さらに局所的なサイトカインの発現増強が膵島炎、糖尿病にどのように影響するかを検討するため、グルカゴンプロモーターにより膵島のα細胞でサイトカインIL-12(p35,p40あるいはp35-p40)、TGFβ1、viral IL-10(vIL-10)を発現するNODトランスジェニックマウスの作製を進めた。次年度以降、これらのマウスを正常NODマウスと交配して得られた子孫マウスを用いてトランスジーン発現を確認するとともに20週令で膵臓の組織をとり、膵島炎の頻度をlittermateと比較する。さらに糖尿病の発症について経過を追跡する。
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