研究概要 |
HTLV-1トランスジェニックマウス(Tg)での関節炎発症に関与するサイトカインを同定するために、IL-1α,IL-1β,IFN-γ,TNF-α,IL-4,IL-6のそれぞれの遺伝子ノックアウトマウス(KO)とHTLV-1Tgとを交配して関節炎の発症率を比較した。IFN-γKOマウスは差がなかったが、IL-1α/βダブルKOとIL-6KOマウスでは発症が抑制されることがわかり、この二つのサイトカインが関節炎の発症に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。TNF-αとIL-4については現在観察群を作成中である。またコラーゲン誘導関節炎においてもKOマウスを用いた同様の解析を行い、やはりIL-1とIL-6が発症に重要であることがわかった。以上のように種々のサイトカインKOマウスを用いることで、関節リウマチの発症に関与するサイトカインを同定することに成功しつつある。 昨年度は正常マウスの骨髄細胞をHTLV-1Tgに移植すると関節炎の発症が抑制されることを明らかにしたが、今年度は高発症系のBALB/c背景のHTLV-1Tgの骨髄細胞と脾細胞を正常マウスに移植することで、発症を移入することに成功した。またHTLV-1Tgをヌードマウスの背景にしたら発症が抑制されることも見いだしたので、この関節炎の発症にはT細胞が重要であることがわかった。そこでHTLV-1TgのT細胞のVβレパートリーを調べたところ、関節局所において特定のVβが増加していることがわかった。関節で増加したT細胞が認識する抗原分子を同定するために、脾臓のT細胞をII型コラーゲンやHSP60などの存在下で培養したところ、II型コラーゲンに反応するT細胞のVβが関節T細胞のVβと一致するものがあり、関節で増加しているT細胞がII型コラーゲンを抗原として認識していることが示唆された。
|