Tecキナーゼが具体的にどのような生理活性を担っているかを明らかにする目的で、Tecあるいは他の非受容体型チロシンキナーゼ発現プラスミドをマウスIL-3依存性細胞株BA/F3細胞に電気穿孔法にて導入した。またその際、レポータープラスミドとしてc-fos promoter/luciferaseを同時に導入し、各キナーゼによるプロモーター活性可を検討した。その結果Tecが非常に強くc-fos転写を誘導することが判った。さらに不活型Tecキナーゼを導入した場合は、サイトカインによるc-fos活性化をdominant negativeに抑制することも判りTecがサイトカインシグナルの中でc-fos転写調節を担っていることが明らかになった。次にTecの下流分子を同定する目的で、Tecのキナーゼドメインを"bait"としてyeast two hybrid screeningを行った結果、7種類のTec-Interacting Proteins(TIPs)が同定された。そのうちTIP-1はGrb10/GrbIRと呼ばれるアダプター分子であった。我々はGrb10/GrbIRがTecと細胞内で構成的に会合することを確認しただけでなく、TecによってGrb10/GrbIRが極めて強くチロシンリン酸化されることを明らかにした。さらにBA/F3細胞にGrb10/GrbIRを導入することでサイトカインによるc-fos活性化は抑制されることも明らかになった。したがってTecは細胞内でc-fos活性化機構をONにするだけでなくnegative feedback loopもスタートさせることが示された。
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