研究概要 |
Cキナーゼ(PKC)は、アトピー性皮膚炎、花粉症などの基となる炎症メデイエーターの放出中心的役割を果たしているセリンスレオニンリン酸化酵素である。本研究では、マスト細胞のモデル系としてRBL-2H3細胞を用い、ヒスタミンやTNFα等の産生と放出に関わるPKC分子種の活性化機構と放出制御機構を明らかにし、PKC活性調節による炎症反応の抑制方法を開発することを目的として平成8年度より開始した。 本年度、PKC分子種の種々の活性型及びドミナントネガチブ変異体を作成し、遺伝子導入発現によって、抗原刺激による脱顆粒の過程に介在するPKC分子種の同定とその役割について解析した。RBL細胞をウエスタン分析で調べると、α,βI,βII,δ,ε,ζの6種類のPKC分子種が発現しており、γ,η,θ,λは検出されなかった。これらは、ホルボールエステル非依存性のζを除いて、いずれもTPA又は抗原(DNP)刺激によって細胞質から膜にすみやかに移行し、TPA長時間刺激では量的に減少(down-regulation)した。この結果は、5種類のPKC分子がTPAによる直接刺激のみならずFcεRIを会した刺激で活性化されることを示唆する。更に、BI,BII,δの野生型遺伝子、新たに開発したドミナントネガチブや常時活性型PKC変異体をエレクトロポレーションによって強制発現させ、ヘキソサミニダーゼの活性をヒスタミン脱顆粒の指標として、細胞内における内在性のPKC分子の生理的役割を解析し、βIIはヒスタミン等の開口放出に促進的に作用し、他方、εはむしろ抑制的に作用することを明らかにした。以上の結果は、マスト細胞のIgE受容体活性化を介する炎症メデイエーターの脱顆粒において、βIIによる促進とεによる抑制の複雑な抑制が機能していることを示唆する。
|